マイナスからのゼロ

とある休日のお昼、飲食店に入ったらけっこう混んでいて、客の数に対して店員さんの手数とか、メニューの数とか足りていない感じだった。ぼくが通された席にはメニューがなくて、店員さんもなかなかつかまりそうにないから、仕方なく、空いていた近くのボックス席にあったメニューを勝手に拝借してきた。注文が終わったら、さっと戻そう。

ぼくが注文を終えるちょっと前に、そのボックス席にお客さんが入ってきてしまった。男子高校生4人。日焼けの感じと髪型から察するに、野球部の人たちかな。席に着いてすぐに「おいメニューないぞ」「ほんとだ」「ほんとだ」「店員さん呼ぼう」「すいませーん!」といった声が溢れ出ていた。

そんな声を気にしつつ、ようやく注文を済ませたぼくは、その男子高校生たちの方にメニューを差し出して「よかったら、これどうぞ」と言った。男子高校生たちは、元気な声をきれいに揃えて「「「「ありがとうございます!」」」」と言ってメニューを受け取ってくれた。

マイナスの状況でゼロを与えられると、人の口からは「ありがとう」の言葉が出るのだなぁ、ってことと、ちゃんとお礼を言える若い男の子たちは気持ちのいい存在だなぁ、ってことを思った。休日っぽくてよい。