不適切なゴールに向かって邁進する

最近、開発に関わっているサービスの現状を正しく把握したいと思って、いろいろな定性データ・定量データと向き合って過ごしている。ぼんやりと文章や数字を眺めていても、ふむふむ〜なるほどですぞ〜とか言いながら時間を浪費するばかりで、「じゃあ、ここから俺たちは何やればいいんスか?」に対する回答が得られないのが難しい。なにかしらの仮説や意図を持ち合わせた状態で挑まないと、得られるものも得られない。ひとつひとつの数字が何を表しているのかを理解できないのならば、数値目標を設定するだなんてもってのほかだ。

ぼくは、数値目標を設定することに対して臆病だ。不適切な目標を設定してしまうと、そこに関わる人たちの全エネルギーを誤った方向に向かわせてしまう危険性があるからだ。どうしても慎重になる。

ぼくのまわりにも何人かユーザのいる、ウェブ時代のデジタル万歩計「Fitbit」を常用するようになると、毎日の目標歩数を達成することに喜びを感じるようになる。「おめでとう!今日の歩数を達成しました」と表示してもらえると、うれしい。「あと100歩で目標達成です」なんて示されてしまったら、家の中で足踏みして目標を達成させることもある。

逆に、これの着用を忘れた日には、途端に歩く気が起きなくなったりもする。仲間たちとの会話の中で「(Fitbitを忘れてきたから)今日はもう、歩く意味ない」「今日は歩数をドブに捨てた」なんて台詞が飛び出したこともあった。まぁ、これは本人たちも自覚的に言っているからただの笑い話なんだけれど、いつしか「健康のためにたくさん歩こう」から「Fitbitのシステム上で目標歩数を達成しよう」に目標が挿げ替わってしまうことの危うさを予感させてくれる。

そして冗談ではなく、実際の社会の一部においても、不適切な目標に向かってチームが一丸となって邁進してしまう例はあるので、自分がその船に乗ってしまわないように、そうなってしまったらなるべく早くにそれに気付けるように、気を付けていかなくちゃならない。

ピリッとする。