1、10、100、1000、10000。

ある朝、1円玉を拾った。

その10分後くらいに、今度は10円玉を拾った。

人間の脳は、点と点との間につながりや物語を見出そうとする性質がある。1円玉、10円玉、と入力を与えられた脳は、ごくごく自然に100円玉の到来を待ち望んでいた。

結果を言うと、とうとうその日、100円玉がやってくることはなかった。その日の夜にもう一度、1円玉を拾っただけだった。

「12円を拾った」と書けば、その通りなのだけれど。「まず、1円を拾った。次に、10円を拾った。そして…」と考えると、脳は勝手に広がる展開を想像して、おそらく12円分以上は楽しんでくれていたと思う。そんな日だった。